4月のコラム
健康に役立つ運動の仕方


 いま、運動の重要性が見直されています。適度な運動をすることは身体の働きを高め、精神的ストレスを解消して、生活習慣病の予防や改善に役立ちます。いろいろな病気に対して、積極的に運動療法を行うようにすすめられています。

○危険なく運動を行うために
 中高年になって運動を始める、とくに何か病気があってその治療のために運動を始めるときには、医師や専門家によるメディカルチェックが必要です。運動というのは、身体に負荷(身体的ストレス)を加えることによって、身体能力をより以上に高めるために行うものですから、負荷がかかりすぎると思わぬ事故を招くことがあります。
(1)冬は日中の暖かい時間に、夏は朝晩の涼しい時間に行う。
(2)冬は帽子、手袋、マスク、保温性のある衣服など、寒さ対策を十分に。
(3)汗をかいたときには、水分補給を忘れずに。夏には特に注意が必要。
(4)無理な頑張りは厳禁です。例えば、つらくなってきたとき何とかそれを乗り切ろうとしたり、目標タイムをもうけてそれを達成しようとする、信号が赤になりそうなとき急いで渡ろうとするなどは、事故の原因になります。
(5)運動種目は、歩行、ジョギング、サイクリング、水泳、エアロビクス、自転車エルゴメーター(固定式自転車)など、運動強度を自分で調節でき、全身的な、リズミカルな運動が適しています。
(6)筋力トレーニング(重いバーベルを持ち上げるなど)のように力を伴う運動は好ましくありません。冷たい水での水泳は、高血圧や心臓病の人にはすすめられません。
(7)勝負や得点を争う種目は好ましくありません。とくにゴルフは、フルスイングのときにしばしば腰を痛めますし、パットのときの緊張がストレスとなり心臓発作などで倒れる例が少なくありません。
(8)運動前には準備体操を、終わったあとは必ず整理体操を忘れずに。

○運動強度の決め方
 中高年になって、病気の改善や予防のために運動を行う場合、必ず医師や専門家の指導が必要です。運動をしながら心電図や血圧を測定し、どのくらいの強さまでなら安全かを調べてもらいますが、その運動の強さを覚えておいて、その範囲内で運動を行うようにします。病気のない人であれば、運動したあとに脈拍を調べ、安全な運動強度を調べることもできます。年齢別の1分間の脈拍数の限度を次にあげておきます。
60代以上...120、50代...125、40代...130、30代以下...135
ここまでの範囲の強度の運動を行えばよいのです。身体にとって楽であり、いつまでも続けられそうな感じで、かるく汗をかく程度、これが50-60%の強度の運動です。

○病気別の運動療法の注意
〔高血圧〕
 運動によって血管を拡張させるので、血管に柔軟性が出て血圧を下げます。手首や指で測定できる血圧計があれば、運動しながら測定し、最高血圧180mmHg/最小血圧110mmHgを超えない範囲で行います。1回20分くらいからはじめ、なれてきたら少しずつ時間をのばします。週に2-3回は行いましょう。

〔高脂血症〕
 運動を行うことで善玉コレステロール(HDL)が増え、悪玉コレステロール(LDL)を減らすことができます。中性脂肪も下げることができます。50-60%強度の運動を30分くらい行い、少しずつ時間をのばしていきます。毎日か1日おきに実行します。

〔糖尿病〕
 運動によって血液中のブドウ糖を消費しますし、細胞の糖の取り込みを高め、糖尿病を改善することができます。50-60%強度の運動を、20分行って5-10分休み、20分行って5-10分休み、20分行います。毎日続けることが大切です。

〔心臓病〕
 心臓の冠状動脈の血流を増加させるので、血管を拡張したり、汚れを洗い流す、狭心症の発作を防ぐなどの効果があります。危険のない範囲の強度の運動を、20-40分行います。週に3-4回が適度です。

〔高尿酸血症〕
 強い運動は血液中の尿酸を増やします。しかし、ごく弱い運動は逆に尿酸を減らします。体力の30-40%くらいの、とても楽な、物足りない程度の運動を、1日20-40分行います。週に3-4回。運動後にスポーツ飲料などで水分補給をしてください。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎