2月のコラム
カゼの予防と治療には休養こそが大切


○人間は一生のあいだに200回カゼをひく
 1年間にカゼをひく回数は、東京の成人で平均年2回という調査があります。子ども時代はもっとよくカゼをひきますから、一生のあいだに150-200回はカゼをひくものと考えられます。カゼの原因はいろいろありますが、その90%以上がウイルス感染によることがわかっていて、そのウイルスの種類は200以上にものぼるとされます。
 残念ながら、ウイルスを退治する薬はまだありませんから、カゼを治すには自分の持っている免疫力によって、ウイルスを退治するよりほかに方法はありません。この免疫力を強化するには、「休養」こそが何よりも大切で、そのためには仕事を休んで身体を休めるとともに、食事や生活の節制を守って体力を養うことが肝心です。
 私たち医師の立場からいえば、まず医師の診察を受けて、適切な治療として、処方された薬をのんで、温かくして休むということが理想です。むかしから「カゼは万病のもと」といわれますが、カゼをこじらせて別の病気を引き起こしたり、持病を悪化させる等"カゼだ"と思っていても実は重大な病気のこともあるからです。 とりあえずは、市販の薬を飲んで様子をみることも結構ですが、高熱が続く、症状が悪くなっていく、異様にだるい、発疹や黄疸、むくみ、のどや首のリンパ節がはれて痛むなどの症状が出てきた場合には、直ちに医師の診察を受けましょう。

○カゼは初期に治してしまうことが肝心
 カゼはひきはじめに治してしまうことが大切です。「カゼひきだな」と思ったときの対策は「安静」「保温」「栄養」の3つです。
(1)安静
 とにかく横になって休むことです。1日休めば治ってしまうカゼを、忙しいからと無理に出勤したり、家事を頑張ったりすると、こじらせたり長引かせるもとになります。
(2)保温
 安静をとるときに保温に気をつけましょう。部屋を暖かくして、きちんとふとんをかけ、寒くないようにして寝ます。暖房のために部屋の空気が乾燥したり汚れたりしないよう、保温と換気に注意してください。汗をかいたらこまめに下着を換えて、身体を冷やさないようにします。
(3)栄養
 体力をつけ免疫力を増強するために、栄養補給が大切です。消化のよい食品を温かくして食べるのがよく、鍋焼うどんや野菜入り卵ぞうすいなどはおすすめ料理です。薬味として身体を温める作用のあるネギやショウガを加えましょう。ビタミンCを多く含んだ果汁のジュースを温めて飲むのも結構です。食欲がないときは無理して食べる必要はありません。その他、水分を十分に補給する(汗をかくので水分が不足する、のどをうるおしウイルスや細菌などを洗い流す)、タバコをやめる(鼻、のど、気管などの粘膜の抵抗力を低下させる)、ストレスを避ける(免疫力を低下させる)などの注意も大切です。

○カゼを予防するために
 寒さがカゼの原因になるといわれますが、むしろ「暖かい」「寒い」の激しい温度変化がよくないことがわかっています。日常生活のなかでは、暖房のある暖かい部屋と寒い屋外を出入りしなくてはなりませんが、そのときに衣服をこまめに脱ぎ着するようにして、温度差の影響を少なくすることが大切です。暖房の中で厚着をしていて汗をかき、そのまま寒い屋外に出て体を冷やすというのが、カゼの重要な引き金になります。
 カゼがはやっているときには、外出時にマスクをするのも予防に役立ちます。ウイルスの侵入を防ぐというより、冷たい外気の直接の刺激を避ける、鼻やのどの粘膜の乾燥を防ぐなどによって、ウイルス感染を予防します。外出から帰ったときは、うがいも結構ですが、その代わりに、熱い飲み物を一杯飲むのも、カゼの予防に役立ちます。ウイルスや細菌を洗い流し、冷えた身体を温める効果もあります。
 カゼかなと思ったとき、背中のいちばん上、首のつけ根と首すじのあたりを、使い捨てカイロやヘアドライヤーなどで温める民間療法も効果があります。温かい手のひらで温めるだけでも気持ちよく、かぜ症状が改善します。インフルエンザの予防接種を受けておくことも大切です。その効果は100%とはいきませんが、たとえ感染しても軽くすませることができるなどの効用があります。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎