○薬になる酒
「酒は百薬の長」と言われるように、適量のアルコールは心身にプラスになります。
(1) | 心身の緊張をほぐし、精神的ストレス解消に役立ちます。 |
(2) | 全身の血液循環をよくし、新陳代謝を促進します。 |
(3) | 高血圧や動脈硬化を予防し改善して、狭心症、心筋梗塞、脳卒中を防ぎます。 |
○毒になる酒
酒も飲み過ぎれば、いろいろな害をもたらします。
(1) | 短時間に大量に飲むと、神経がマヒして急性アルコール中毒になります。 |
(2) | 肝細胞が障害されて肝炎を起こしたり、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝になったり、それが進行すると肝硬変(肝臓の組織が固まって働きを失う)になります。 |
(3) | 急性胃炎を起こしますし、それが慢性胃炎へとつながることもあり、また胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。 |
(4) | アルコールは膵臓ガンの重要な原因になります。 |
(5) | 酒ばかり飲んで食事をとらないために、栄養障害を起こします。 |
(6) | 酒を飲まずにはいられないアルコール依存症(いわゆるアルコール中毒)になります。 |
(7) | 脳や神経が障害されて、精神障害や運動障害を起こすことがあります。 |
○タバコの精神的効用も否定された
タバコが健康によくないことは、どなたもご存じのとおりです。多くの愛煙家は「精神的な疲れを回復する効果がある」と言います。しかし、残念ながら、その精神的効用についても、否定的な実験結果がでているのです。
愛煙家の人たちに5日間禁煙してもらって、その前と、禁煙中と、その後の3回、身体的な検査とともに、精神神経機能を調べるいくつかの能力テストを行いました。その結果、身体的な検査はすべてが禁煙中がよくなっていました。精神神経機能については、禁煙前も喫煙中も喫煙再開後も、ほとんど変化が見られませんでした。
禁煙中、イライラする、無気力になる、頭痛がするなどと訴える愛煙家の人も少なくありませんでしたが、いざ能力テストをしてみると精神神経機能は低下していなかったのです。というわけで、タバコはやはり「百害あって一利なし」だったようです。
○タバコがもたらす身体的な害
(1) | ガンの原因になる タバコを吸わない人に比べて、喫煙者はほとんどのガンで、死亡率が高くなっています。喉頭ガン13.6倍、口腔ガン7倍、肺ガン3.6倍、食道ガン2.6倍、膵臓ガン1.8倍、子宮ガン1.7倍、肝臓ガン1.6倍、胃ガン1.5倍、前立腺ガン1.4倍....。 |
(2) | 呼吸器病を引き起こす 肺炎、気管支炎、咽頭炎、肺気腫、気管支ぜんそくなど、ほとんどの呼吸器病が喫煙者に多く、しかも喫煙本数の多い人に高率という調査結果がでています。 |
(3) | 心臓発作や脳卒中を起こしやすくなる タバコは、善玉コレステロールをへらして悪玉コレステロールをふやし、動脈硬化の元凶とされる活性酸素を作りだし、血管を収縮させて血圧を上昇させるなどで、心筋梗塞や脳卒中による死亡を増加させます。 |
(4) | 胃腸の働きを低下させる タバコをやめた人のほとんどが、胃腸の調子がよくなり食欲が増したと言います。それだけ、タバコは胃腸の働きを妨げていたのです。胃・十二指腸潰瘍を起こす率は、タバコを吸う人が約2倍も多いという調査報告もあります。 |
まず何よりもタバコをやめることがたいせつです。それがどうしてもできない人は、できるだけ害の少ない吸い方(低害喫煙)を心がけましょう。そのためには、本数をへらす、煙を深く吸い込まない、タバコを口にする回数をへらす、吸いがらをできるだけ長く残す、くわえタバコはやめる、低害タバコを選ぶ、野菜とくに緑黄色野菜をたくさんとる、酒を飲むときはタバコを吸わないなどがたいせつです。
アルコールの害を防ぐには量をすごさないこと。1日に飲む量は、日本酒2合、ビール大びん2本、ウイスキーダブル2杯、ワインハーフボトル1本以内にします。そして、タンパク質やビタミンB1の豊富なつまみを食べ、強いアルコールは薄めて飲む、週に1-2日は休肝日をもうける、そして楽しみながら飲む(ヤケ酒はダメ)ことがたいせつです。
C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎