9月のコラム
ある日あなたをおそう「突然死」の危険


○突然死の重要な原因が生活習慣病
 それまで元気に働いていた人が、ある日突然病に倒れ、そのまま亡くなったという話を耳にすることがあります。その人たちは何ら病気をもっていなかったように思えますが、実はほとんどの人がその背景に生活習慣病をもっているのです。
 厚生省の調査によると、30-64歳の働きざかりに亡くなった人の12.2%は、発病から1週間以内に死亡した「急な病死者」、いわゆる「突然死」でした。死因は、心臓病(51%)、脳卒中(35%)、消化器系の病気(6%)の順です。男女別では、男性が女性の約3倍、男性は心臓病が多く、女性は脳卒中が多いという特徴が見られます。 この人たちの72%は何らかの病気(既往症)をもっていました。高血圧症、心臓病(狭心症や不整脈など)、消化器病(肝臓病など)が主なもので、治療を受けている人もいれば、検査で見つかったのに治療せずにいた人もいます。そして、その人たちの3分の2は、事前に何らかの異常を訴えていました。主な自覚症状は、だるい、疲労感、疲れやすい、胸痛、冷や汗、肩こり、手足のしびれなどです。
 生活習慣病と言うと、慢性的にゆっくり進行する病気のように思われがちですが、このように急な死をもたらすことも少なくないのです。

○働きバチに起こりやすい心臓病
 急死の原因となる心臓病としては、次のようなものがあります。
(1)心筋梗塞....心臓の血管の動脈硬化が原因。高血圧症、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症などの人は、食事をはじめとする生活管理が大切。息切れ、動悸、胸苦しさ、胸痛、手足の脱力感やしびれなどの症状があったら、早めに医師の診察をうけましょう。
(2)不整脈....心臓の拍動を起こしている自立神経系の故障が原因。飲酒時や運動をしたとき、緊張したときなどに、息苦しくなって脈が速くなるなどがあったら精密検査を。
(3)その他....高血圧が原因で心肥大になり、心破裂や心不全(心臓のポンプが十分に働かなくなる)を起こします。動脈硬化がすすんでできた大動脈瘤が破れる解離性大動脈瘤、血栓が肺動脈につまる肺動脈塞栓なども、急死の原因になります。

○脳卒中は高血圧と頭痛に注意
 脳卒中には脳出血と脳梗塞とがありますが、働き盛りの急死の原因になるのは、ほとんどが脳出血です。
(1)脳出血....そのほとんどが高血圧症の人ですから、食事や薬で血圧をコントロールしましょう。過労、睡眠不足、深酒、ストレスなどが脳出血の引き金になります。
(2)クモ膜下出血....脳の動脈瘤が破れるために起こります。頑固な頭痛、目の奥の痛み、首や肩のこりなどがあったら専門医の診察を。

○消化器病はアルコールとストレスが要注意
 急死の原因になる消化器病としては、次のようなものがあります。
(1)食道静脈瘤....肝硬変の合併症である食道静脈瘤が破れ、大出血を起こします。肝臓病の人はまず飲酒をやめ、食事の注意を守るとともに、過労やストレスを避けましょう。
(2)膵臓壊死....膵臓の病気は大酒家におこりやすいので、飲み過ぎに注意。
(3)胃・十二指腸潰瘍....ストレスが重要な原因になります。過労や不摂生をさけ、ストレスをためない生活を心がけ、引き金になるアルコールもほどほどに。

○突然死を防ぐための日常生活の心得
(1)30歳を過ぎたら定期検診を欠かさずに。再検査が必要と言われたら、必ず受診を。
(2)ふだんと違う症状、頑固な頭痛や肩・首のこり、めまい、耳鳴り、胸苦しさ、胸痛、手足の脱力感やしびれ、動悸、脈の乱れなどがあったら、早く医師の診察を。
(3)高血圧症、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肝臓病などの人は、食事をはじめとする生活の注意を守り、正しく薬を服用してきちんとコントロールしましょう。
(4)お酒の飲み過ぎはいけません。急死者の3人に1人は大酒を飲んでいました。
(5)過労、睡眠不足、不摂生をさけ、十分な休養と睡眠をとり、適度な運動をして、規則正しいリズムある生活を。
(6)ストレスをためない。トラブルは早く解決し、運動や趣味などでストレス解消を。
(7)入浴時や排便時に事故は多発します。熱い風呂、長湯、急激な温度変化、強いいきみは要注意。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎