6月のコラム
増えている「脳梗塞」、減っている「脳出血」


○脳卒中って、どんな病気?
 脳の血管がつまってそこから先に血液が流れなくなるのが「脳梗塞」、脳の血管が破れて脳の中に出血するのが「脳出血」です。これらを合わせて「脳卒中」と言います。脳卒中は日本人の3大死因の1つで、7-8人に1人はこれで亡くなっています。食事をはじめとする生活環境が重要な原因となる、生活習慣病の1つです。
 突然、気分が悪くなり、頭痛や吐き気を起こし、意識が薄れることもあり、重症になれば昏睡状態になり、そのまま死に至ることもあります。助かったあとも、半身が不自由(片麻痺)になることが多く、右半身が不自由になるとしばしば言語障害を伴います。

○日本人にふえている脳梗塞
 脳の血管に血の固まりがつまって脳梗塞を起こすと、そこから先に血液が流れなくなり、その部分の脳が死んでしまいます。脳梗塞には脳血栓と脳塞栓があります。動脈硬化がすすんで脳の血管の血液の通り道が狭くなっているところで、血液がかたまって血管をつまらせるのが「脳血栓」です。心臓などよそで生じた塞栓(血の固まりや細胞など)が流れてきて、脳の血管をつまらせるのが「脳塞栓」です。不整脈、心筋梗塞などの心臓病があると、心臓の中の血液の流れが滞って血栓をつくり、これが脳に流れていって脳塞栓を起こすことがよくあります。けがや手術のあとにも見られます。
 脳梗塞はもともと日本人には少なかったのですが、第2次大戦後、現在に至るまで上昇の一途をたどっています。日本人の食事が欧米化して、肉類をたくさん食べるようになり、動物脂肪のとりすぎが動脈硬化をすすめたからです。予防には、あとでお話しするように、食生活の注意がとてもたいせつです。
 なお、一過性脳虚血発作といって、食事中にはしをポロッと取り落としたり、一過性に舌がもつれてしゃべれなくなる、手足がしびれるなどの症状を起こすことがあります。しばらくするともとにもどるのですが、近い将来、脳梗塞を起こすことが多いので、医師の診察をうけておくことがたいせつです。

○高血圧が重要な原因になる脳出血
 もろくなっている脳の血管に、強い圧力がかかって破れ、脳の中に出血を起こすのが脳出血です。かつて日本人に多かったのですが、食事や生活が改善され、高血圧の予防や治療が広く行われるようになって減ってきています。とはいえ、まだまだ日本人は塩の摂取量が多いので高血圧になりやすく、注意しなくてはなりません。
 言い争いなどで興奮する、重いものを持ち上げる、トイレで強くいきむなどのときによく起こりますから、高血圧の人はこれらに注意してください。冷たい刺激も禁物で、夜間にトイレに起きたときや、寒い屋外に外出するときには防寒対策に気をつけましょう。入浴するときは、脱衣所や浴室を暖めてから入り、熱すぎる湯につかったり、湯上がりに冷水を浴びるなどは避けましょう。排便のとき強くいきむのも要注意です。 野菜類をたっぷりとって便通を整えることもたいせつです。便秘をすると血圧にもよくありませんし、トイレで強くいきむのも発作の引き金になります。

○脳卒中を予防する食事と生活の注意
(1)塩辛い食べ物を控えましょう。塩のとりすぎは腎臓に負担をかけて高血圧をまねき、それがまた動脈硬化を促進します。
(2)肉類やバターはほどほどに。含まれているタンパク質は血管を強化して脳出血を予防しますが、動物脂肪のとりすぎはかえって動脈硬化をすすめます。
(3)魚介類をたっぷり食べましょう。魚の脂は動脈硬化を予防しますし、血が固まるのを防いで脳梗塞を予防します。
(4)野菜や果物、海藻、きのこをたくさんとりましょう。最近の研究で、これらには血が固まるのを防ぐ成分が含まれていることが明らかにされています。また、食物繊維が高血圧や動脈硬化の予防に役立つし、脳出血予防にたいせつな便秘も改善します。
(5)食べすぎをしないように。肥満は高血圧、動脈硬化の重要な原因になります。
(6)タバコは止め、アルコールはほどほどに。
(7)適度な運動はたいせつです。高血圧や動脈硬化を予防するし、血管を強化します。
(8)ストレスをためないようにしましょう。ストレスは高血圧や動脈硬化の原因になるし、脳卒中発作の引き金になります。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎