3月のコラム
日本人に増えている心臓病を予防するには?


 生活習慣病のうち特に重要なのは、日本人の死因のトップ3である、ガン、心臓病、脳卒中です。今回は、その中から心臓病についてお話ししましょう。

○狭心症と心筋梗塞
 私たちが年をとると血管も老化がすすみ、弾力を失うとともに、血管の内側によごれがたまって、血液の通り道が細くなります。この現象を動脈硬化と言います。心臓の筋肉に血液を供給している冠状動脈も、年齢とともに動脈硬化がすすみます。その結果、早足で歩くとか、階段を一気にのぼるなどして、心臓に負担をかけたときに、心臓の筋肉はたくさんの酸素と栄養を必要としますから、細くなった血管からではその供給が間に合わなくなります。そのため、胸が痛むなどの症状がでます。これが狭心症です。
 さらに動脈硬化が進むと、血管の細くなったところに血の固まり(血栓)がつまり、血液が供給できなくなりますから、そこから先の筋肉は死んでしまいます。そのとき、激烈な痛みに襲われます。これが心筋梗塞です。

○こんなことがあったら狭心症に注意
 朝、家を出て少し歩いたところで、急に胸をしめつけられるような痛みを感じたので、立ち止まって1-2分休んだら、痛みもおさまったので歩きだし、そのあとは何もなかった....そんな経験をもっている方はいませんか。これは、まさに狭心症の症状です。
 狭心症は、心臓が働きを高めたときに起こりやすいのです。歩き始め、運動のし始め、急ぎ足になったとき、坂や階段をのぼるとき、食事のあと、寒い思いをしたとき、興奮したとき、腹を立てたとき、タバコを吸ったときなどです。こうした条件が重なると、特に起こりやすいのです。
 狭心症の自覚症状は、胸がしめつけられるような痛みで、その痛みが、左肩や左腕の内側、あるいはあごに向かって走ることもあります。人によっては、胃の痛みと感じたり、奥歯の痛みとして感じることもあります。その痛みも、静かに休んでいると間もなくおさまり、その後はまったく平常にもどってしまいます。そのあと、前と同じように、あるいはもっと早足で歩いても、何ともないものですから、つい見過ごしてしまうのです。 もしも、こうした症状に思い当たる方がいたら、すぐに専門的な検査を受けてください。狭心症は短時間で症状がおさまり、それで死ぬことはありませんが、放っておくとちょっとしたことでも発作が起こるようになり、それが心筋梗塞へとつながっていきます。
 心筋梗塞が起こると、焼け火箸を突き刺されたような、鉄の爪で引き裂かれるような、などと表現される強烈な痛みにおそわれます。そのまま死にいたることも少なくありませんから、すぐに救急車を呼んで専門施設(CCU)のある病院に入院しなくてはなりません。さいわい助かっても、心臓の一部がだめになってしまいますから、心臓の働きが低下することになります。

○狭心症や心筋梗塞を予防するには
 いろいろな調査や研究によって、狭心症や心筋梗塞の原因である動脈硬化を進める危険因子(リスク・ファクター)と言われるものが明らかにされています。この危険因子をなるべく減らすようにすれば、狭心症や心筋梗塞も予防が可能です。
(1)高血圧
(2)高脂血症(血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる)
(3)喫煙
(4)糖尿病
(5)肥満
(6)高尿酸血症(痛風)
(7)ストレス、A型性格(血液型のA型ではなく、攻撃型で完ぺき型のいわゆる猛烈社員と言われる、ストレスがたまりやすいタイプ)
(8)運動不足
(9)加齢
(10)男性であること(この病気は男性に多い)
(11)家族歴(肉親に狭心症や心筋梗塞、脳卒中を起こした人がいる)
 このうち、最後の3つの項目はどう努力しても避けることはできませんが、前の8項目は、避けたり改善したりすることが可能です。また、高血圧、高脂血症、喫煙の3つは、特に危険が大きく、3大危険因子と呼ばれていて、注意が大切です。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎