7月のコラム
穀類をしっかり摂った食事が健康と長寿をもたらす


○穀類は我々の活動エネルギーの供給源
 穀類に含まれる栄養の約4分の3は炭水化物で、これは体内でブドウ糖に変わり、我々が活動するためのエネルギー源となります。つまり、穀類は私達が働いたり歩いたり運動したりするときに必要なエネルギーを供給してくれるのです。脳が働くときのエネルギーもブドウ糖から作られますから、勉強したり頭脳労働をするためにも、穀物は大切なのです。 この他、米には約7%、小麦には約10%、そばには約12%のタンパク質が含まれています。日本人が摂っているタンパク質の約4分の1は穀類からですので、穀類はタンパク質の供給源でもあるのです。ご存じのように、タンパク質は肉や血液、ホルモンなどを作る材料になります。

○かつてはお米が悪者にされていた
 日本人に高血圧や脳出血、胃ガンが多いのは、お米をたくさん食べるせいであると言われたことがあります。さらには、「お米を食べすぎると頭が悪くなる」といった珍説まで出現しました。
 かつての日本人は、漬けものと味噌汁などの塩辛いおかずだけでご飯を食べ、おなかを満たしていました。肉や魚などのおかずはあまり食べなかったので、タンパク質や脂肪が不足して栄養が偏り、塩分の摂りすぎになったのです。塩分の摂りすぎは高血圧や胃ガンの原因になります。そして、タンパク質や脂肪が不足すると血管がもろくなり、脳出血を起こすことになるのです。これが、かつての日本人の食事の欠点でした。 ですから、お米が悪いわけではなく、塩分の摂りすぎとタンパク質や脂肪の不足に、実は問題があったのです。また、お米の主成分である炭水化物が脳の活動のエネルギー源であり、世界でも有数の文明国を創った日本人の主食がお米であることを考えれば、お米で頭が悪くなるというのは、まさに珍説であるとおわかりいただけるでしょう。

○穀類の摂りすぎは肥満の原因?
 肥満の解消には、お米やパンなどの穀類を減らさなくてはいけないと言われます。確かに、お米やパンをどっさり食べれば肥満の原因になります。しかし、太りすぎてしまった人たちの主な原因は、穀物よりもむしろ砂糖や油ものの摂りすぎにあるのです。砂糖がたくさん入っているお菓子類や飲みもの、油を使ったスナック菓子を間食としてたくさん食べ、肉の脂肪や油もの料理をどっさり食べて、カロリーの摂りすぎになっているのです。 ですから、肥満の予防のためには、お米やパンなどの主食をきちんと食べなさいと指導されます。穀類は砂糖や油よりもカロリーが少ないのです。食事のときに主食を十分摂っておけば、腹もちがいいので、間食をあまり食べずにすみ、肥満の原因になる砂糖や油の摂りかたが少なくなって、カロリーの摂りすぎを防げるからです。

○穀類を摂れば栄養バランスがよくなる
 以上のような誤解から、お米などの穀類は悪者扱いされてしまいました。ですから、「ご飯よりも、おかずをちゃんと食べなさい」と言われたものです。しかし、これがなんと、生活習慣病(いわゆる成人病)を助長する一因になってしまったのです。おかずとして肉類や乳製品をどっさり食べ、それに含まれる動物性脂肪を摂りすぎたために、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞で倒れる人が増えたのです。
 いま、我が国は世界一の長寿国になりました。なぜそうなったのかを、世界各国の専門家が調査研究した結果、その要因がお米を中心においた日本食にあることを明らかにしました。お米を主食にして、肉や魚介類料理の主菜に、野菜類料理の副菜を添えた食事が、栄養バランスに優れていて、生活習慣病予防にもよいのです。欧米人の食事と比較してみるとわかりやすいのですが、彼らは肉をかたまりでドカンと食べ、さらに牛乳や乳製品をたくさんとり、パンや野菜を添えものにちょっと食べるという食事をしています。 日本人の食事は、お米から炭水化物を、魚や肉、卵からタンパク質と脂肪を、野菜や海藻からビタミンやミネラル、食物繊維を摂り、すべての栄養素がとてもバランスよく摂れているのです。穀類を中心においたこの食生活こそが、動脈硬化の進行を防ぎ、健康と長寿に大切なのです。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎