6月のコラム
野菜に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維の働き


 栄養的に見ると、野菜はビタミンとミネラルを供給する食品です。それとともに、豊富に含まれる食物繊維が、私たちの健康にとてもたいせつな働きをしています。野菜に多く含まれるビタミンとしてはAとCがあります。

○ビタミンAの多彩な働き
 緑黄色野菜(小松菜、ほうれん草などの色の濃い野菜やにんじん、かぼちゃなど)にはカロチンが豊富ですが、このカロチンは体内に入るとビタミンAに作り変えられます。ビタミンAは不足するとトリ目(夜盲症)になることで知られていますが、むしろ細胞分裂にたいせつな働きをしています。育ち盛りの年齢に欠かせませんし、生殖という面でもとても重要です。また、皮膚や粘膜の新陳代謝を高めて肌をきれいにする、ニキビや吹き出ものを改善する、カゼの予防に役立つなどの作用があります。ガンの治療や予防に効果のあることが明らかにされています。このほか、ビタミンAには抗ストレス作用があるといわれ、ストレスの多い人は血液中のビタミンAが少ないという報告もあります。

○ビタミンCは老化防止にたいせつ
 ビタミンCは、細胞と細胞を結びつけるコラーゲンを作るのに関与していて、血管や体の組織を丈夫に若々しく保つのに重要な働きをしています。ですから、動脈硬化の予防にたいせつで、呆けを防ぐ効果があるともいわれます。動脈硬化や老化の重要な原因物質である過酸化脂質ができるのを防げる作用もあります。日焼けやシミを防ぎ、皮膚を白く美しくたもってくれます。
 ノーベル賞学者のポーリング博士が、ビタミンCには免疫力を高める作用があると発表して以来、カゼ予防に利用している人も少なくありません。また、胃の中にできるニトロソアミンという発ガン物質をこわし、胃ガンの予防に役立つことも明らかにされています。また、抗ストレス作用のある副腎皮質ホルモンの生産に一役かっていて、ストレス予防には欠かせないビタミンです。

○ミネラルは微量ながら不可欠の働きをしている
 ミネラルとは体にたいせつな働きをする元素のことで、野菜が重要な供給源になります。そのうち、鉄は不足すると貧血になりますから、貧血になりやすい女性は野菜を十分にとって不足しないように注意してください。カルシウムは骨や歯の材料になるほか、筋肉の収縮、神経の伝達に重要な役割をしています。カリウムは塩の害を防いで、高血圧の予防や改善に役立ちます。 ガンを予防するといわれるセレン、味覚や精子の製造にたいせつな亜鉛、そのほかマグネシウム、銅、コバルトなどのいろいろなミネラルが、ほんの微量ながら体内でとても重要な働きをしています。知らず知らずのうちにそれらを供給してくれるのが野菜なのです。

○食物繊維が生活習慣病を予防する
 野菜にたくさん含まれる食物繊維は、消化吸収されず栄養になりませんから、これまでは便秘の改善に役立つ以外は無用のものと考えられていました。ところがその後の研究で、健康のためにたいせつな働きをいくつもしていることが分かってきました。
 まず、余分なコレステロールを体外に排出して、血中コレステロールが高くならないようにしますから、動脈硬化の進行を予防します。また、塩分を排出する働きもあって、塩の害で起こる高血圧の予防や改善にも役立っています。こうした作用によって、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などの予防に貢献しています。
 さらに、食物繊維には糖の吸収を遅らせる働きもあり、肥満や糖尿病の治療と予防に利用されています。また、消化管のなかでできる発ガン性の物質を包みこんで害をへらすし、便通をよくして発ガン物質が腸にとどまる時間を短くします。また、腸内細菌のうち善玉菌を増やして悪玉菌を追い払い、悪玉菌が作り出す有害物質や発ガン物質をへらす作用もあります。 食物繊維をたくさんとると通じがつきやすくなります。便秘を改善すれば痔にもいいですし、大腸憩室や大腸ポリープ、大腸ガンなどの予防にもなります。アメリカでの研究によれば、便秘症の人は大腸ガンだけでなく、乳ガンにもなりやすいとのことです。
 このほかにも、野菜には私たちの健康に役立ついろいろな成分が含まれていることが、最近の研究で次々と明らかにされています。それについては、別の機会にお話ししましょう。ご馳走をどっさり食べて体内に有害物質をたくさん作り、いろいろなストレスにさらされている現代人は、野菜をたっぷり食べて、その害を防ぐようにしたいものです。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎