3月のコラム
砂糖もいいけれど摂りすぎるとこんなに害がある


○砂糖は薬にも毒にもなる
 砂糖を調味料としてじょうずに使えば、料理がおいしくなります。砂糖をたっぷり使った和菓子やケーキなどは、私たちの味覚を楽しませてくれます。疲れたときの一杯の甘い飲み物は、たちまち疲れをいやしてくれます。砂糖は、私たちが活動するための、エネルギー源となるのです。このようにありがたい砂糖ですが、摂りすぎるといろいろな害をもたらします。
 砂糖の害の第1は虫歯でしょう。ストレプトコッカスミュータンスなどの虫歯の原因となる菌は、砂糖が大好きなのです。菓子を食べたりジュースを飲んだあと、砂糖が口にのこっていると、菌はそれを分解して酸を作ります。歯のカルシウムはその酸で溶かされ、歯に穴があいてしまうのです。砂糖のないところには虫歯はないと言われるように、砂糖は虫歯の重要な原因なのです。 しかし、虫歯の原因は砂糖そのものよりも、生活習慣にあるとも言えます。いつもお菓子をクチャクチャ食べていたり、のどが渇いたと言っては甘味の強い飲料を飲んだりしているのがいけないのです。時間をきめておやつのお菓子を与え、清涼飲料も必要なときだけ飲ませ、そのあとにはかならず歯みがきをさせれば、虫歯は十分予防できるのです。

○ビタミンやカルシウムの不足をまねく
 近年、若者や大酒飲みの人たちに、潜在的なビタミンB1不足のあることがわかってきました。いまの若者は、甘いスナック菓子でお腹をふくらませ、のどが渇くと砂糖のたくさんはいった清涼飲料を飲んでいます。糖分をエネルギーにかえるときやアルコールを処理するとき、ビタミンB1を必要としますから、砂糖や酒だけ摂ってビタミンB1を含んでいる肉や野菜などを摂らないと、ビタミンB1が不足してしまうのです。
 さらに、砂糖の摂りすぎはカルシウム不足ももたらします。ビタミンB1とカルシウムは、ともに神経伝達に重要な働きをしていますから、これが不足すると神経に障害を生じます。最近の青少年に見られる家庭内暴力や非行は、砂糖の摂りすぎによるビタミンB1とカルシウムの不足が一因ではないかと指摘する専門家もいます。また、大酒飲みのビタミンB1をはじめとするビタミンB群の不足は、脳や神経の障害をまねくことがわかっています。

○砂糖の摂りすぎによる最大の害は肥満
 欧米人の肥満の原因は、肉類をどかんと大量に食べ、肉についている脂をたくさん摂るとともに、スナック菓子と清涼飲料に含まれる砂糖の摂りすぎとされます。日本人、特に女性は、甘いお菓子類と清涼飲料の摂りすぎが多いようです。
 肥満は百害あって一利なしと言われます。死因別に、標準体重の人と肥満の人の死亡率をくらべてみると、すべてで肥満の人がうわまわっていて、唯一低いのは自殺という結果が出ています。 では、太りすぎるとどのような害があるのでしょうか。
(1)血圧を上昇させる一因になり、高血圧を引き起こす。
(2)血液中の中性脂肪やコレステロールをふやし、動脈硬化がすすむ。
(3)高血圧や動脈硬化のために、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを起こす。
(4)糖尿病の素因のある人では、発病の引き金になる。
(5)高尿酸血症の原因となり、痛風を起こしやすい。
(6)ガンの一因となり、特に、男性では大腸ガンと前立腺ガン、女性では乳ガン、子宮体ガン、卵巣ガンが肥満者に多発している。
(7)肝臓に脂肪がたまる脂肪肝を起こすし、胆石症も肥満者に多い。
(8)重い体重を支えるために、骨や関節をいため、腰痛や膝痛などを起こす。
(9)転んだり、階段から落ちるなど、ケガをしやすいし、交通事故も多い。
(10)女性では月経不順や不妊症になりやすい。
元気に長生きするために、肥満を解消する努力をしてください。

○砂糖による害を起こさないための心得
(1)必要なエネルギーは、米、パン、めん類などの食事から摂り、砂糖はあくまでも調味料として使用する。
(2)甘いケーキやクッキー、和菓子などは、食間に栄養を補うために摂る。肥満傾向の人はお菓子類を食べたら、その分、食事の量をへらす。
(3)清涼飲料は運動後などの疲労回復にはいいが、それ以外はなるべく甘味のうすいものを飲む。
(4)コーヒーや紅茶にいれる砂糖は、必要最低限にするように。特に1日に何杯も飲む人は注意が必要。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎